- 清掃は終わったのに交換用のシーツが届かず、スタッフが現場で待機している
- 清掃会社とリネン会社に別々の請求が立ち、実際の1回あたり原価が把握できていない
- 予約が変わるたびに2社へ連絡が必要で、事務作業に毎月まとまった時間を取られている
民泊のリネン費用というと、まずセット単価に目が行きます。しかし実際にオーナー様の手残りを削っているのは、単価そのものより「清掃とリネンを別々の会社に発注していること」から生じる重複コストであることが少なくありません。
配送便が二重に動き、待機時間に人件費が発生し、2社分の事務手数料と連絡工数がかかる。特に小田原・箱根エリアは配送に時間のかかる地形のため、この重複が金額に表れやすい地域です。
本記事では、民泊向けリネンレンタルを清掃と一括管理にすることで、どの費目が減るのかを構造から整理します。年間6,000件以上の民泊清掃と、箱根の民泊清掃の現場で実際に起きていることをもとにまとめました。
分離発注がコストを押し上げる5つの経路
清掃会社とリネン会社を分けて発注すると、運営に「継ぎ目」ができます。この継ぎ目が、単価の比較だけでは見えにくい形でコストを押し上げます。
清掃車とリネン配送車が、同じ物件へ別々に向かいます。本来1回の移動で済むところに2台分の車両費・人件費がかかり、その分が双方の料金に乗ります。距離のあるエリアほど差が開きやすい部分です。
清掃スタッフが到着してもリネンが届いていなければ、ベッドメイクに進めません。待機している間も人件費は動き続け、次の現場の予定にも影響します。
月額の基本料金や事務手数料が、それぞれの会社に発生します。1件あたりでは小さくても、稼働の少ない月ほど固定費として重くのしかかります。
予備リネンの不足に最初に気づくのは現場の清掃スタッフですが、リネン会社との契約関係がありません。オーナー様を経由して発注する流れになるため対応が遅れ、割高な緊急便を使わざるを得なくなることがあります。
予約の変更や数量の調整が生じるたびに、清掃会社とリネン会社の両方へ連絡する必要があります。請求書の突き合わせも2社分となり、オーナー様の作業時間として積み上がっていきます。
小田原・箱根では、この重複が金額に出やすい
箱根町は麓の湯本エリアから芦ノ湖周辺まで標高差の大きい地形です。芦ノ湖の湖面標高はおよそ720mあり、同じ町内でも移動にかかる時間や路面の状況が場所によって変わります。
この地理条件は、配送コストに次のような形で効いてきます。
- 移動効率の低さ山道は距離のわりに時間がかかり、1台が1日に回れる件数が限られます。1件あたりの配送単価が上がりやすくなります。
- 観光シーズンの渋滞ゴールデンウィーク・夏休み・紅葉期は主要道路が混雑します。稼働が最も高まる時期と、配送が最も不安定になる時期が重なります。
- 冬季の路面状況麓が雨でも標高の高い地域では凍結・積雪が起こり得ます。ルート変更や遅延が発生すると、待機コストにつながります。
配送が読みにくいエリアであるほど、便を分けている損失は大きくなります。逆に言えば、一括管理による効果が出やすい地域でもあります。
箱根の強羅エリアで運営されている物件で、連休中にリネンの到着が大幅に遅れ、清掃スタッフが現場で待機せざるを得なくなったことがありました。渋滞に加えて、配送業者が山側のルートに不慣れだったことが重なったケースです。待機した時間分の人件費に加え、その日に予定していた別物件の作業も後ろ倒しになりました。現在は清掃車がリネンを運ぶ形に切り替え、同様の待機は起きにくくなっています。
※実際のお客様の事例をもとに作成しています。リネンレンタルの費用構造|どの費目が二重になっているか
「リネンレンタルは高い」という声を伺うことがありますが、見積もりを分解すると、どこが重複しているのかが見えてきます。
料金を構成する3つの要素
見積もりを比較するときに見るべき項目
料金は業者・物件の立地・利用数量・契約形態によって幅が大きく、一律の相場を示すことは困難です。ただし、小田原・箱根エリアで差が生まれやすいのは、おおむね次の項目に集約されます。
- 配送区分の距離加算(小田原市街と箱根の山側で区分が分かれていないか)
- 最低利用数量(1回あたり・1か月あたりのミニマム設定の有無)
- スポット便・緊急便の料金(直前予約や連泊延長で追加が必要になったとき)
- 訪問頻度と回収のタイミング(定期便のみか、清掃のたびの納品・回収か)
- 基本料金・事務手数料が別建てになっていないか
通常期の単価だけで比較すると、繁忙期に実際に支払う金額との差が大きくなります。年間の実コストを左右するのは、配送区分の距離加算・最低利用数量・スポット便の3点だと考えておくと見誤りにくくなります。
自前管理とレンタル|見えないコストの正体
「自分で洗えば安く済む」という考え方は、運営規模が小さいうちは成り立つことがあります。ただしコストを分解すると、請求書に現れない支出が含まれています。
- 水道光熱費1回の洗濯・乾燥ごとの積み重ねが、月単位ではまとまった額になります。
- 洗剤・消耗品費定期的に発生し、業務用と比べて単価も割高になりがちです。
- 設備投資と回転率家庭用洗濯機は乾燥に時間がかかるため回転が遅く、そのぶん保有するリネンの枚数を増やす必要が出てきます。
- 買い替えコスト洗濯を繰り返すと生地は傷みます。温泉地の物件では温泉成分の影響で買い替えサイクルが短くなることがあります。
- オーナー様の時間洗濯・乾燥・畳み・在庫確認に費やす時間です。時給換算すると、他の業務に充てられたはずの時間が失われていることになります。
判断の目安物件数が増えるほど、自前管理の負担は大きくなります。1〜2戸なら対応できていた作業量が、戸数が増えた段階で運営の制約になるケースが多くあります。「洗濯があるから物件を増やせない」状態になっているかどうかが、切り替えを検討する一つの目安です。
自前購入とレンタルの年間コストについては、条件を4パターンに分けて試算した記事があります。金額ベースで比較したい場合はそちらをご覧ください。
温泉地の物件で買い替えサイクルが短くなる要因については、泉質ごとの影響を別記事で解説しています。
民泊代行・民泊清掃・リネンのご相談 — お見積もり無料
清掃と一括管理にするとコストのどこが下がるか
清掃とリネンを同じ会社にまとめると、前半で挙げた5つの経路がそれぞれ解消に向かいます。費目ごとに何が変わるかを整理します。
金額としてどれだけ下がるかは、物件数・稼働率・立地によって変わるため、一律の削減率をお示しすることはできません。ただし「どの費目が減るのか」は上記のとおり構造的に決まっています。現在の請求書をこの5項目に分解してみると、ご自身の物件でどこに効くかが見えてきます。
コスト以外に変わること
- 責任の切り分けが不要になる:「シーツの汚れは納品時か、その後の取り扱いか」といった確認役をオーナー様が担う必要がなくなります。
- その場で代替できる:汚れや破損が見つかった際、予備のリネンに交換して対応しやすくなります。
- 品質のばらつきが減る:清掃とベッドメイクの基準を同じ会社が管理するため、仕上がりが揃いやすくなります。
ただし、一括管理が常に最適とは限りません。すでにリネン業者と良好な関係があり、配送も安定している場合は、無理に切り替える必要はありません。
小田原と伊東で複数の物件を運営されているオーナー様から、分離発注時代のご相談をいただいたことがあります。エリアごとに別のリネン業者と契約していたため、請求書の突き合わせと繁忙期の数量調整に毎月まとまった時間を取られていたとのことでした。清掃とリネンをまとめ、配送ルートを整理したことで、事務作業にかけていた時間を圧縮できたとご報告いただいています。金額面の効果は物件の稼働状況によって変わるため一律の削減率をお約束できるものではありませんが、管理工数の面では変化を感じていただきやすい部分です。
※実際のお客様の事例をもとに作成しています。コストを下げても外せない衛生の下限
費用を見直す際に、交換頻度を落とす方向で考えるのは避けたほうが安全です。リネンの交換には法令上の要件があります。
住宅宿泊事業法(民泊新法)で運営している場合
住宅宿泊事業法にもとづく届出住宅では、国が定める施行要領(ガイドライン)の衛生確保措置において、次のように示されています。
「寝具のシーツ、カバー等直接人に接触するものについては、宿泊者が入れ替わるごとに洗濯したものと取り替えることとする。」
出典:厚生労働省・国土交通省・観光庁「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)」
つまり、シーツ・カバー・ピロケースなど肌に触れるものはゲストが入れ替わるたびに洗濯済みのものへ交換することが求められます。あわせて、居室の床面積を宿泊者1人あたり3.3㎡以上確保すること、設備・備品を清潔に保ち定期的に清掃・換気を行うことも同じ衛生確保措置に含まれています。
簡易宿所(旅館業法)で運営している場合
民泊新法ではなく、旅館業法の簡易宿所営業として運営している物件もあります。この場合は厚生労働省の「旅館業における衛生等管理要領」が適用され、寝具の衛生的な取り扱いが求められます。
どちらの制度でも「宿泊者が入れ替わるごとに洗濯済みのリネンへ交換する」運用が必要になる点は共通です。削減の対象にできないのは、この入れ替え時の交換です。なお同一のゲストが連泊する期間中の交換頻度については、旅館業の衛生等管理要領で寝衣は毎日、その他は3日に1回以上と示されており、運用を設計する余地があります。
一括管理へ切り替える手順と確認項目
現在の体制に課題があっても、いきなり全物件を切り替えるとリスクがあります。次の順序で進めると、影響を抑えながら比較できます。
切り替え時の注意旧業者との契約には解除の予告期間が設定されていることがあります。期間が重複して二重に費用が発生しないよう、契約書を確認したうえで移行時期を調整してください。
業者選定の一般的なチェック項目や、契約前に使える質問リストは別記事にまとめています。
小田原市内の物件で、契約時に「箱根エリアも対応可能」と聞いていたオーナー様が、2棟目を仙石原に取得した際に追加の配送料が必要と分かり、想定していた収支と差が出てしまったことがありました。契約書には配送区分の記載があったものの、1棟目の時点では確認する必要がなかった項目です。複数エリアでの展開を考えている場合は、将来の物件所在地も含めて条件を確認しておくと、後から見直す手間を減らせます。
※実際のお客様の事例をもとに作成しています。まとめ|下げるべきは単価ではなく「重複」
この記事の要点を整理します。
- 重複を特定する配送費・待機人件費・基本料金・スポット便・事務工数の5項目に請求書を分解します。
- エリア条件を踏まえる小田原・箱根は配送に時間がかかる地形のため、便を分けている損失が金額に表れやすくなります。
- 衛生の下限は守るシーツ・カバー類は宿泊者が入れ替わるごとに洗濯したものへ交換することが求められます。ここは削減の対象になりません。
- 段階的に切り替える1棟での試験導入を経てから広げると、想定外の負担を抱え込みにくくなります。
インビックスでは、小田原・箱根・熱海・湯河原・伊東エリアで民泊清掃とリネン管理をあわせてお引き受けしています。現在の請求書のどこに重複があるか整理するところからでもご相談いただけますので、お気軽にお問い合わせください。
お見積もり・ご相談は無料です
民泊清掃・リネンレンタル・代行運営など、運営のお悩みをお気軽にお聞かせください。
よくある質問
清掃とリネンを一括管理にすると、コストはどのくらい下がりますか?
削減額は物件数・稼働率・立地によって変わるため、一律の割合をお示しすることはできません。ただし減る費目は構造的に決まっており、配送費(清掃車が運搬するため別便が不要になる)、リネン未着による待機の人件費、2社分に分かれていた基本料金・事務手数料、在庫把握の遅れによるスポット便、そして予約変更のたびに2社へ連絡する事務工数の5つです。現在の請求書をこの5項目に分解すると、ご自身の物件でどこに効くかを確認できます。
コストを抑えるためにリネンの交換頻度を減らしてもよいですか?
宿泊者が入れ替わるときの交換は削減できません。住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)の衛生確保措置では、寝具のシーツやカバー等、直接人に接触するものについては、宿泊者が入れ替わるごとに洗濯したものと取り替えることとされています。一方、同一のゲストが連泊する期間中の頻度には設計の余地があり、旅館業の衛生等管理要領では寝衣は毎日、その他は3日に1回以上と示されています。いずれにせよ費用を見直す主な対象は、交換頻度ではなく配送・在庫・事務といった周辺の費目です。
リネンレンタルの料金はどのように決まりますか?
一般的にはセット単価(シーツ・カバー・ピロケース・タオル類など1名分の基本料金)、配送・回収費、紛失や毀損が生じた場合の補填費という3つで構成されます。金額は業者・立地・利用数量・契約形態によって幅が大きいため、一律の相場を示すことは困難です。小田原・箱根エリアでは特に、配送区分の距離加算、最低利用数量、スポット便の料金の3点で見積もりに差が出やすくなります。
なぜ小田原・箱根エリアでは分離発注の損失が大きくなるのですか?
配送に時間のかかる地形だからです。箱根町は麓の湯本エリアから芦ノ湖周辺まで標高差が大きく、芦ノ湖の湖面標高はおよそ720mあります。山道は距離のわりに所要時間が長いため1台が1日に回れる件数が限られ、1件あたりの配送単価が上がりやすくなります。加えて観光シーズンの渋滞や冬季の路面凍結による遅延も重なるため、清掃車とリネン車を別々に走らせている損失が金額に表れやすくなります。
自前でリネンを購入するのと、レンタルではどちらが安く済みますか?
物件数・稼働率・保管スペースの有無によって変わります。自前管理では購入費のほかに、水道光熱費、洗剤・消耗品費、乾燥に時間がかかることによる保有枚数の増加、生地の劣化による買い替え費用、そしてオーナー様が洗濯・在庫確認に費やす時間が発生します。特に温泉地の物件では温泉成分の影響で買い替えサイクルが短くなることがあります。条件別の年間コスト試算は関連記事で4パターンに分けて検証しています。
参考文献
- 厚生労働省・国土交通省・観光庁「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)」(寝具のシーツ・カバー類の交換など、衛生確保措置の内容を確認)
- 厚生労働省「旅館業における衛生等管理要領」(簡易宿所として運営する場合の寝具の取り扱いを確認)
- 箱根ジオパーク推進協議会「芦ノ湖」(芦ノ湖の湖面標高を確認)
この記事は、小田原・箱根・熱海・湯河原・伊東エリアで民泊物件の清掃とリネン管理を手がけてきた経験にもとづいて作成しています。配送条件や料金体系は業者・物件の立地・契約内容によって異なり、削減できる金額も個別の運営状況によって変わります。法令の適用については、運営形態や所在地の自治体によって取り扱いが異なる場合がありますので、必要に応じて所管の保健所や専門家へご確認ください。
この記事の監修者
黒須 大株式会社インビックス 代表取締役
高級旅館および複数の宿泊施設での現場経験を基盤に、宿泊運営の構造を実務レベルで理解。
その後、ハウスクリーニング事業を立ち上げ、サービス設計・品質管理・オペレーション構築を主導してきました。
現在は宿泊施設専門の民泊関連サービスに注力し、単なる清掃支援にとどまらず、事業設計・運営改善・体制構築までを包括的にサポート。現場と経営の両視点から、持続可能な宿泊事業の成長を支援しています。

