- 次の予約まで2週間空いた別荘に入ったら、屋根裏から物音と獣臭がする
- 朝の清掃に向かうと、ゴミが敷地一面に散乱している
- 「自分で捕まえて処分すればいい」と思っていたが、それが違法だと知らなかった
箱根・熱海エリアの別荘や一棟貸しの戸建てを民泊として運用する場合、山林に近い立地そのものが物件の価値になります。一方で同じ立地条件が、イノシシ・サル・ハクビシンといった野生鳥獣を呼び込む要因にもなります。
やっかいなのは、被害に気づいたオーナー様が自分で対処しようとすると、法令に触れるおそれがある点です。野生鳥獣の捕獲には許可が要ります。オーナー様が許可なしにできることと、行政や専門業者に任せるべきことの線引きを知らないまま動くと、被害の解決以前の問題になりかねません。
本記事では、箱根の民泊清掃と熱海の民泊清掃の現場経験をもとに、別荘・一棟貸しタイプの物件に絞って、予防・初動・被害後の清掃を整理します。法令の扱いは公的機関の情報にもとづいて記載しています。
別荘・一棟貸しタイプの物件が被害を受けやすい4つの条件
同じ箱根・熱海でも、マンションタイプの物件と別荘・一棟貸しの戸建てでは、害獣リスクの大きさが違います。理由は物件そのものの構造と運用の仕方にあります。
一棟貸しは単価が高いぶん、稼働日が飛び飛びになりがちです。次の予約まで数週間空くと、その間に侵入されても誰も気づきません。発見が遅れるほど、糞尿の蓄積や建材の損傷が進みます。
庭・駐車場・アプローチが広い分、外周のどこからでも侵入されます。建物の周囲をすべて管理下に置くことが難しく、誘引源(生ゴミ・落果・屋外に残された食品など)を見落としやすくなります。
木造の戸建て・別荘には、ハクビシンやアライグマが住み着ける空間があります。集合住宅にはない構造上のリスクで、いったん定着されると清掃だけでは解決しません。
一棟貸しは1回あたりのゴミ量が多く、回収日まで屋外保管になりがちです。生ゴミは最も強い誘引源で、一度餌場と認識されると繰り返し来訪されます。
裏を返すと、対策の効き方もこの4条件に沿って決まります。誘引源を断つ・開口部を塞ぐ・無人期間に点検を入れる・寄せ付けにくくするという4つの打ち手を、後段で順に解説します。
箱根の別荘物件で、オーナー様から「なんだか獣臭い」とご相談をいただいたことがあります。確認したところ屋根裏にハクビシンが侵入しており、糞尿が蓄積していました。前回の宿泊から3週間ほど空いており、その間に定着したとみられます。清掃だけでは対応できないため専門業者へ引き継ぎ、侵入口の封鎖と消毒を行いました。無人期間が長い物件では、予約が入っていなくても定期的に屋根裏まで見ておくと、発見が早まります。
※実際のお客様の事例をもとに作成しています。箱根・熱海で警戒する害獣と、痕跡による見分け方
姿を見なくても、残された痕跡から相手はある程度絞り込めます。相手が違えば対策も変わるため、まず何が来ているのかを見極めます。
感染症について正確に理解しておく野生動物の咬傷や糞尿には衛生上のリスクがあり、糞尿の処理には手袋・マスクと消毒が必要です。一方で、日本は狂犬病の清浄国とされ、動物では1957年の症例を最後に国内発生が報告されていません。過度に恐れる必要はありませんが、咬傷を負った場合は種類にかかわらず医療機関を受診してください。
オーナーが自分で捕獲することはできない|法令の整理
ここが本記事で最も押さえていただきたい部分です。屋根裏にハクビシンがいると分かったとき、罠を仕掛けて捕まえたくなりますが、それは許可なしにはできません。
捕獲には行政の許可が必要
野生鳥獣の捕獲は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(鳥獣保護管理法)で規制されています。神奈川県の案内では、被害対策を行っても被害を防げない場合に捕獲等の許可を受けるものとされ、許可権者は鳥獣の種類によって分かれています。
- 市町村長の許可タヌキ・イノシシなどを含む獣類14種、鳥類23種
- 環境大臣の許可希少鳥獣、かすみ網を使用する場合
- 県知事の許可上記以外の鳥獣
これはイノシシやサルに限った話ではなく、屋根裏に住み着いたハクビシンも同じ扱いです。ただしアライグマは特定外来生物で、後述のとおり別の枠組みが用意されています。自治体によって窓口も手続きも異なるため、まず物件所在地の役場に相談するのが確実です。
箱根と熱海では相談先が違います上記の許可権者の区分は神奈川県の案内によるものです。熱海市は静岡県のため、取扱いが異なる場合があります。物件のあるエリアの窓口へ直接お問い合わせください。
- 箱根町:環境整備部 環境課。鳥獣被害防止柵の設置補助、狩猟免許取得時の補助、捕獲実施報償金といった支援制度を設けています。
- 熱海市:観光建設部 観光経済課 農林水産室。市による有害鳥獣駆除も実施されています。
アライグマとハクビシンは法的な扱いが違う
見た目が似ていて混同されやすい2種ですが、位置づけが異なります。
許可なしでオーナーができること
捕獲はできませんが、追い出す・入れない・寄せ付けないという方向の対策に制限はありません。実務上、オーナー様が取り組む価値が高いのはこちらです。住宅に侵入された場合は、侵入口を確認し、建物から追い出したうえで、金網等で侵入口を塞ぐという順序で進めます。
熱海の別荘物件で、オーナー様がホームセンターで購入した箱罠を設置しようとされていたことがありました。捕獲には許可が必要である旨をお伝えし、市の窓口へ相談していただいたところ、まず侵入口の封鎖から進める方針になりました。結果として、罠を使わずに再侵入は止まっています。良かれと思っての行動が法令に触れる場合があるため、着手前に窓口へ確認する順序が大切です。
※実際のお客様の事例をもとに作成しています。民泊代行・民泊清掃・リネンのご相談 — お見積もり無料
許可がいらない予防策|入れない・寄せ付けない
捕獲に頼らず、物件側の条件を変える対策です。別荘・一棟貸しの物件では次の4つが基本になります。
電気柵は宿泊施設では慎重に判断する
電気柵は本来、農地の獣害対策として使われる設備です。宿泊施設の敷地に設置する場合、ゲストや近隣の方が立ち入る可能性を前提に安全要件を満たす必要があります。農林水産省は、電気用品安全法の適用を受ける電気さく用電源装置を使うこと、目立つ位置に危険表示板を設置すること、30V以上の電源から供給し人が容易に立ち入る場所に設置する場合は定格感度電流15mA以下・動作時間0.1秒以下の電流動作型漏電遮断器を設けることなどを示しています。
自作の昇圧装置を使った設置による死亡事故も過去に発生しています。ゲストが自由に歩く敷地では、まず誘引源の除去と開口部の封鎖で対応し、電気柵の導入は専門業者と行政に相談したうえで判断してください。
侵入されたときの対応手順
すでに入られている場合は、順序を守って進めます。ゲスト滞在中かどうかで初動が変わります。
- 野生動物に直接近づく、追い立てる、素手で触れる
- 許可を得ずに罠を仕掛ける、捕獲する
- 餌を与える(一時的に静かになっても、来訪が定着します)
- 追い出す前に侵入口を塞ぐ(内部に閉じ込めてしまい、死骸による被害が拡大します)
- 消臭スプレーだけで済ませる(臭いの原因物質が残ります)
4つ目は見落とされがちです。追い出しを済ませてから封鎖する、という順序を守ってください。
被害後の清掃と原状回復
害獣被害の後始末は、通常のターンオーバー清掃(ゲストのチェックアウトから次のチェックインまでに行う通常清掃)とは別物です。安全面と、どこまで交換が必要かの判断が要点になります。
糞尿の処理は保護具と消毒を前提に
糞尿には衛生上のリスクがあるため、素手での処理は避け、手袋・マスクを着用し、換気したうえで消毒剤を使用します。ハクビシンは同じ場所に糞を重ねる習性があるため、屋根裏では一箇所に大量に蓄積していることがあります。断熱材まで汚染が及んでいる場合は、清掃ではなく交換の判断が必要です。
臭いは発生源を除かないと戻る
建材に染み込んだ臭いは、消臭剤の散布だけでは戻ってくることが多くあります。汚染箇所の特定と、汚染された建材の除去・交換まで踏み込んではじめて解決に向かいます。天井裏の作業は高所になるため、足場と踏み抜きに注意し、無理な体勢での作業は避けてください。
寝具・リネンは交換で判断する
室内に侵入されて寝具が汚損した場合、洗濯で戻すより交換するほうが確実です。次のチェックインが迫っている状況では、予備の確保が結果を分けます。リネンレンタルを利用していると、こうした緊急時に代替を手配しやすくなります。
伊東の別荘物件で、室内に侵入された形跡があり、寝具が汚損していたケースがありました。翌日にチェックインを控えていたため、汚損したシーツ類は交換し、汚染箇所の清掃と消毒を行ったうえで受け入れています。リネンをレンタルで運用されていたため代替の手配が間に合いましたが、自前の在庫のみだった場合は判断が難しかったと思います。緊急時の代替手段があるかどうかで、対応の幅が変わります。
※実際のお客様の事例をもとに作成しています。まとめ|捕獲ではなく「入れない設計」で守る
この記事の要点を整理します。
- 物件タイプ特有の弱点を知る無人期間の長さ・広い外周・屋根裏の存在・屋外のゴミ保管が、被害を受けやすい条件になります。
- 捕獲は行政の手続きが要る鳥獣保護管理法により、許可なく捕獲することはできません。アライグマのように届出で対応できる枠組みがある種もあり、鳥獣の種類と自治体によって手続きが変わるため、まず物件所在地の自治体へ相談します。
- 予防は許可不要誘引源の除去・開口部の封鎖・定期点検は、いつでも着手できて効果が長く続きます。
- 電気柵は別枠で考える農地向けの設備であり、宿泊施設で使うなら安全要件を満たしたうえで専門業者と行政に相談してから判断します。
- 被害後は交換の判断が要点糞尿処理は保護具と消毒を前提に、汚染が及んだ建材や寝具は交換を検討します。
インビックスでは、箱根・熱海・小田原・伊東エリアで民泊清掃をお引き受けしており、無人期間の点検や被害後の清掃にも対応しています。捕獲・駆除そのものは専門業者と行政の領域ですが、「どこに相談すればよいか分からない」という段階からご相談いただけます。
お見積もり・ご相談は無料です
民泊清掃・リネンレンタル・代行運営など、運営のお悩みをお気軽にお聞かせください。
よくある質問
屋根裏にハクビシンがいます。自分で捕まえてもいいですか?
許可なく捕獲することはできません。野生鳥獣の捕獲は鳥獣保護管理法で規制されており、鳥獣の種類に応じて市町村長・県知事・環境大臣のいずれかの許可が必要です。屋根裏に住み着いたハクビシンやアライグマも同じ扱いになります。まず物件所在地の自治体窓口へ相談してください。箱根町は環境整備部環境課、熱海市は観光建設部観光経済課農林水産室が担当で、神奈川県と静岡県で取扱いが異なる場合があります。なお、アライグマについては神奈川県のアライグマ防除実施計画にもとづき、市町村へ届け出ることで捕獲等ができる仕組みがあります。一方で、追い出す・侵入口を塞ぐ・誘引源を断つといった対策は、いずれの場合も許可なく行えます。
別荘・一棟貸しタイプの物件が特に狙われやすいのはなぜですか?
4つの条件が重なるためです。一棟貸しは稼働が飛び飛びになりやすく無人期間が長いため発見が遅れること、敷地が広く外周が山林に接するため誘引源を見落としやすいこと、木造戸建てには屋根裏や床下という住み着ける空間があること、1回あたりのゴミ量が多く屋外保管になりがちなことです。裏を返せば、誘引源を断つ・開口部を塞ぐ・無人期間に点検を入れる・寄せ付けにくくするという4つが対策の柱になります。
アライグマとハクビシンで対応は変わりますか?
法的な位置づけが異なり、捕獲の手続きも変わります。アライグマは環境省の特定外来生物等一覧に掲載されている特定外来生物で、神奈川県では県のアライグマ防除実施計画にもとづき、市町村へ届け出ることで捕獲等ができる仕組みがあります。地域住民等が防除を行う場合は「捕獲等従事者」となるための届出が必要です。一方ハクビシンは特定外来生物には指定されておらず、こうした枠組みがないため、捕獲には鳥獣保護管理法の許可が必要です。自治体によって手続きや支援制度が異なるため、種類を伝えたうえで窓口に相談するのが確実です。
イノシシ対策に電気柵を設置してもよいですか?
宿泊施設の敷地では慎重な判断が必要です。電気柵は本来、農地の獣害対策に用いられる設備で、ゲストや近隣の方が立ち入る場所では安全要件を満たさなければなりません。農林水産省は、電気用品安全法の適用を受ける電気さく用電源装置を使用すること、目立つ位置に危険表示板を設置すること、30V以上の電源から供給し人が容易に立ち入る場所に設置する場合は定格感度電流15mA以下・動作時間0.1秒以下の電流動作型漏電遮断器を設けることなどを示しています。過去には自作の昇圧装置による死亡事故も発生しています。まず誘引源の除去と開口部の封鎖で対応し、導入は専門業者と行政に相談したうえで検討してください。
害獣被害の後、清掃だけで元に戻せますか?
汚染の範囲によります。表面的な汚れであれば清掃と消毒で対応できますが、ハクビシンは同じ場所に糞を重ねる習性があるため、屋根裏では断熱材まで汚染が及んでいることがあります。その場合は清掃ではなく交換の判断が必要です。建材に染み込んだ臭いも、消臭剤の散布だけでは戻ってくることが多く、汚染箇所の除去まで踏み込む必要があります。室内で寝具が汚損した場合は、洗濯で戻すより交換するほうが確実です。
参考文献
- 神奈川県「有害鳥獣を捕獲するには」(捕獲許可の要否と、鳥獣の種類別の許可権者を確認)
- 環境省「特定外来生物等一覧」日本の外来種対策(アライグマが特定外来生物に含まれ、ハクビシンは含まれないことを確認)
- 農林水産省「鳥獣による農作物等の被害の防止に係る電気さく施設における安全確保について」(電気柵の電源装置・危険表示・漏電遮断器の要件を確認)
- 箱根町「有害鳥獣被害対策の補助などについて」(箱根町における担当課と補助・報償の制度を確認)
- 熱海市「有害鳥獣駆除作業の実施について」(熱海市における担当課を確認)
- 神奈川県「アライグマの防除」(防除実施計画にもとづく届出と捕獲等従事者の仕組みを確認)
- 厚生労働省「狂犬病」(国内での発生状況を確認)
この記事は、箱根・熱海・小田原・伊東エリアで民泊物件の清掃を手がけてきた経験にもとづいて作成しています。害獣の捕獲・駆除には法令上の許可が必要であり、手続きや支援制度は自治体によって異なります。個別物件により最適な対応は変わりますので、実際の対処にあたっては物件所在地の自治体窓口および専門業者へご相談ください。屋根裏など高所での作業や、薬剤・消毒剤を扱う作業には転落・薬傷の危険が伴います。無理をせず専門業者へ依頼することもご検討ください。
この記事の監修者
黒須 大株式会社インビックス 代表取締役
高級旅館および複数の宿泊施設での現場経験を基盤に、宿泊運営の構造を実務レベルで理解。
その後、ハウスクリーニング事業を立ち上げ、サービス設計・品質管理・オペレーション構築を主導してきました。
現在は宿泊施設専門の民泊関連サービスに注力し、単なる清掃支援にとどまらず、事業設計・運営改善・体制構築までを包括的にサポート。現場と経営の両視点から、持続可能な宿泊事業の成長を支援しています。

