「確かに清掃したはずなのに、ゲストから『汚い』というレビューが届いた」──こうした経験をしたオーナーは少なくありません。問題の多くは、清掃の手を抜いたことではなく、気づかずに見落としてしまった場所にあります。
清掃スタッフは「掃除した」という主観的な事実に満足しやすく、客観的にゲストの目線で部屋を点検する視点が抜け落ちることがあります。ゲストは初めて入る部屋を新鮮な目で見るため、見慣れたスタッフが気づかない汚れを発見してしまうのです。
この記事では、箱根・熱海・小田原・伊東エリアで民泊清掃を手がけるインビックスの現場経験をもとに、清掃漏れが起きやすい10の盲点を解説します。
見落としが起きる構造的な理由
清掃の見落としには、個人の不注意ではなく構造的な原因があります。チェックアウトからチェックインまでの時間が短いほど、清掃スタッフは「目に見える場所」を優先し、細かい角や隙間の確認が後回しになります。また、慣れた物件ほど「いつもきれいにしている」という思い込みが生まれ、確認が甘くなる傾向があります。
ゲストが最初に気づく汚れは、必ずしも大きな汚れではありません。髪の毛1本・水垢の薄い曇り・リモコンの指紋──こうした小さな見落としが、「清掃が行き届いていない」という印象を決定づけます。
見落としがちな場所ベスト10
第1位:排水口の奥・ヘアキャッチャーの裏
浴室の排水口は、表面のゴミを取り除いても、カバーを外した内部やヘアキャッチャーの裏側に髪の毛やぬめりが残りやすい場所です。ゲストがシャワーを使い始めて水が流れにくくなったり、詰まりが起きたりして初めて発覚するケースが多く、レビューへの影響も深刻です。毎回カバーを完全に分解して内部まで清掃・すすぎを行うことを習慣化してください。
第2位:便座の裏側・蝶番の隙間
トイレの便座は「表面は拭いた」で終わりがちです。しかし便座の裏側、特に蝶番(ヒンジ)周辺の隙間には尿の飛び散りや汚れが蓄積しやすく、持ち上げて確認しないと見落とします。スクレーパーや細いクロスを使って蝶番の隙間まで拭き取ることを標準手順に組み込んでください。
第3位:電子レンジの天井・内側の角
電子レンジの庫内は、底面と正面の扉は拭かれていても、天井面と4つの角に食品の飛び散りが残っていることがよくあります。しゃがんで底面を拭くだけでなく、必ず上を向いて天井・角を確認する手順を徹底してください。
第4位:リモコン・電気スイッチの隙間
テレビリモコン・エアコンリモコン・照明スイッチは、ゲストが最も頻繁に触れる場所でありながら、拭き掃除が表面だけで終わりがちです。ボタンの隙間・溝には皮脂や埃が詰まっており、歯ブラシや綿棒を使って溝の汚れをかき出してから除菌拭きをすることで、清潔な状態を保てます。
第5位:冷蔵庫のドアパッキン・野菜室の下
冷蔵庫の清掃は、棚の拭き取りと残置物の除去で終わってしまうことがほとんどです。しかしドアのゴムパッキンには食品の汚れやカビが発生しやすく、野菜室の引き出しの下にも水分や食品カスが溜まります。最低でも2週間に1度は分解清掃を行うことを推奨します。
第6位:浴室ドアの下部・ゴムパッキン
浴室の扉(折れ戸・引き戸)の下部レール・溝・ゴムパッキンは、カビと石鹸カスが溜まりやすい場所です。月1回程度の定期清掃でカビキラーを使い、レールの内部まで拭き取る習慣をつけてください。箱根・熱海など湿度の高い温泉地ではカビの発生サイクルが早いため、より頻繁な確認が必要です。
第7位:ベッド下・ソファの裏側
掃除機がけは「部屋の中央」で終わりがちです。ベッドの下・ソファと壁の隙間・家具の裏側は、掃除機のヘッドが届きにくく、ほこりや髪の毛が蓄積します。細長いノズルアタッチメントを使って家具の下・裏側まで吸引することを標準手順にしてください。
第8位:窓のサッシ・レールの溝
窓ガラスは拭かれていても、サッシのレール(溝)の内部は見落とされやすい場所です。ほこり・砂・虫の死骸などが溜まり、ゲストが窓を開けた際に一目でわかります。観光地エリアでは窓を開けて景色を楽しむゲストも多いため、サッシの汚れは印象に直結します。
第9位:照明器具の上面・電球周辺
シーリングライト・ペンダントライト・スポットライトの上面には、ほこりが積もります。ゲストが部屋を見渡す際、天井付近に目が向くことがあり、照明上の埃は不潔な印象を与えます。月1回程度、脚立を使って上面のほこりをモップや乾いたクロスで取り除いてください。
第10位:玄関ドアの内側・ドアノブ
清掃は「部屋の中」から始まることが多く、玄関ドアの内側・ドア枠・ドアノブは確認が最後になりがちです。ゲストが部屋に入って最初に手を触れる場所がドアノブであり、退出時に最後に触れる場所でもあります。清掃の最後に必ず除菌シートでドアノブ・ドア内側の取っ手を拭き取る手順を加えてください。
インビックスでは、この記事で紹介した見落としポイントをすべてカバーした清掃マニュアルを各物件向けに作成し、全スタッフが統一した手順で作業を行っています。清掃完了後の写真報告もすべての箇所で標準化しているため、遠方のオーナー様も仕上がりをリモートで確認できます。
温泉地(箱根・熱海・伊東)特有の見落としポイント
箱根・熱海・伊東の温泉地物件には、上記10箇所に加えて見落としやすい固有のポイントがあります。
蛇口・シャワーヘッドの付け根の変色
温泉成分(塩化物・鉄分・ミネラル)を含む水が蛇口の付け根部分に溜まり、黄色・茶色・白色に変色します。クエン酸パックを付け根部分にも適用することで、変色を定期的に取り除けます。
追い炊き浴槽の内側ライン
循環式浴槽(追い炊き機能付き)は、湯の水位線に温泉成分が析出して白いラインが残ります。毎回の湯換えのタイミングで水位ライン付近を重点的に確認してください。
押し入れ・クローゼット内の結露・カビ臭
湿度が高い温泉地では、クローゼットの奥や押し入れの角に結露が起きやすく、カビが発生することがあります。開閉して内部のにおいを確認することを標準手順に加えてください。
見落としをゼロにするための3つの習慣
①「ゲスト目線」で最終確認する
清掃が完了したら、一度スタッフの立場を離れて「初めてこの部屋に入ったゲスト」として部屋を見渡してください。入室直後の視線の動き(玄関→リビング→寝室→水回り)を意識しながら、座った目線・しゃがんだ目線で各所を確認すると、立ったまま清掃した際には気づかなかった汚れが見えてきます。
②「奥から手前・上から下」の順序を徹底する
清掃は必ず「奥から手前・上から下」の順で進めます。この順序を守ることで、すでに清掃した場所にほこりや汚れが再び落ちるのを防げます。特に照明・棚の上・エアコン上部など、高い場所のほこりを先に落としてから床の清掃を行う習慣が、見落としを構造的に減らします。
③定期清掃と日常清掃を分けて管理する
排水口の分解清掃・冷蔵庫のパッキン・照明の上面・浴室ドアのゴムパッキンは、毎回の清掃で対応するには時間的に難しい場合があります。「毎回必ず行う日常清掃項目」と「2週間に1回・月1回行う定期清掃項目」に分けて管理することで、漏れなく対応できます。リネンレンタルサービスを活用すればリネン管理の手間も省け、清掃に集中できます。
まとめ
清掃漏れは不注意ではなく構造的な盲点から生まれます。排水口の奥・便座裏・電子レンジ天井・リモコンの隙間・冷蔵庫パッキン・浴室ドア下部・ベッド下・窓サッシ・照明上面・玄関ドアノブという10箇所は、慣れたスタッフほど見落としやすく、初めて部屋に入るゲストに発見されやすい場所です。温泉地(箱根・熱海・伊東)ではこれに加えて蛇口付け根の変色・浴槽の水位ライン・クローゼット内のカビにも目を向ける必要があります。「ゲスト目線での最終確認」「上から下・奥から手前の清掃順序」「日常清掃と定期清掃の分離管理」という3つの習慣を定着させることが、見落としをなくす最も確実な方法です。
よくある質問
民泊清掃で見落としやすい場所はどこですか?
最も見落としやすい場所は、排水口の奥・ヘアキャッチャーの裏、便座の裏側・蝶番の隙間、電子レンジの天井・内側の角、リモコン・電気スイッチの隙間、冷蔵庫のドアパッキンです。これらはスタッフが見慣れて気づかない一方、初めて部屋に入るゲストが発見しやすい場所です。
清掃の見落としを防ぐにはどうすればいいですか?
見落としを防ぐには3つの習慣が有効です。「ゲスト目線」で座った高さやしゃがんだ目線で最終確認すること、「上から下・奥から手前」の清掃順序を徹底すること、そして毎回の日常清掃と月1回の定期清掃を分けて管理することです。
温泉地の民泊で特に注意すべき清掃ポイントはありますか?
箱根・熱海・伊東の温泉地では、蛇口・シャワーヘッド付け根の温泉成分による変色、追い炊き浴槽内側の水位ラインに析出する白い汚れ、押し入れ・クローゼット内の結露やカビ臭に特に注意が必要です。クエン酸パックでの定期的なケアや、開閉して内部のにおいを確認する手順を標準化しましょう。
ゲストから清潔感の低評価レビューを防ぐにはどうすればいいですか?
ゲストが不潔と感じるのは必ずしも大きな汚れではなく、髪の毛1本・水垢の薄い曇り・リモコンの指紋といった小さな見落としです。清掃完了後にチェックシートを使った確認と写真報告を標準化し、構造的に見落としを防ぐ仕組みを導入することが効果的です。
参考文献
この記事は、箱根・熱海・小田原エリアで年間5,000件以上の民泊清掃を実施する経験に基づいて作成されています。個別物件により最適解は異なる場合があります。必要に応じて専門家へご相談ください。
この記事の監修者
黒須 大株式会社インビックス 代表取締役
高級旅館および複数の宿泊施設での現場経験を基盤に、宿泊運営の構造を実務レベルで理解。
その後、ハウスクリーニング事業を立ち上げ、サービス設計・品質管理・オペレーション構築を主導してきました。
現在は宿泊施設専門の民泊関連サービスに注力し、単なる清掃支援にとどまらず、事業設計・運営改善・体制構築までを包括的にサポート。現場と経営の両視点から、持続可能な宿泊事業の成長を支援しています。

