民泊のレビューで「清潔さ」のスコアが低い物件には共通点があります。それは水回り——浴室・トイレ・キッチン——の清掃が不十分であることです。ゲストが最も神経を使う場所であり、「前のゲストの汚れが残っている」と感じた瞬間に即低評価につながります。
この記事では、民泊の水回り清掃で発生しやすい汚れの種類と性質を理解したうえで、浴室・トイレ・キッチンそれぞれの汚れ別対処法とプロの清掃手順を解説します。箱根・熱海・伊東エリアの温泉地特有の水垢・ミネラル成分への対応も含めています。
水回り清掃の基本:汚れの「性質」を理解する
水回りの汚れは大きく「酸性の汚れ」と「アルカリ性の汚れ」に分かれます。汚れの性質と逆の性質の洗剤を使うことで化学的に中和・分解でき、ゴシゴシこすらなくても効率よく落とせます。
油汚れ・皮脂汚れ(酸性)
アルカリ性洗剤(重曹・セスキ・アルカリ電解水)が有効。主にコンロ周り・換気扇・浴槽で発生します。
水垢・石鹸カス(アルカリ性)
酸性洗剤(クエン酸・お酢)が有効。浴室鏡・蛇口・シンクで発生します。
カビ(菌)
塩素系漂白剤(カビキラー等)が有効。浴室タイル・パッキン・換気扇で発生します。
尿石・黄ばみ(アルカリ性)
酸性洗剤(サンポール等)が有効。便器内側・床で発生します。
黒ずみ・複合汚れ
中性洗剤+研磨(メラミンスポンジ)が有効。浴室床・トイレ床で発生します。
塩素系洗剤(カビキラー・ドメスト等)と酸性洗剤(サンポール・クエン酸等)を混合すると有毒な塩素ガスが発生します。同じ場所で複数の洗剤を使う場合は必ず水でよく流してから次の洗剤を使用してください。
【浴室】汚れ別対処法とプロの清掃手順
浴室で発生する主な汚れと対処法
水垢・ウロコ汚れ(鏡・蛇口・浴槽喫水線)
水道水中のカルシウムやマグネシウムが蒸発して固まったアルカリ性の汚れです。箱根・熱海・伊東など温泉地の物件では温泉成分(カルシウム・塩化物・ミネラル)が水道水よりも多く含まれるため、通常より頑固な水垢が付着しやすいという特徴があります。
対処法はクエン酸水(クエン酸小さじ1+水200ml)をスプレーし、キッチンペーパーで覆って10〜15分パックしてから拭き取ります。温泉地の頑固な水垢には濃度を上げるか、クエン酸パックの時間を30分程度に延ばすと効果的です。鏡のウロコ汚れには市販の研磨剤入りシートを使うと傷をつけずに除去できます。
カビ(タイル目地・ゴムパッキン・天井)
湿度の高い浴室で発生しやすい黒カビです。塩素系カビ取り剤(カビキラー等)をカビに直接噴霧し、5〜10分置いてからシャワーで流します。頑固なパッキンのカビにはキッチンペーパーを貼り付ける「湿布法」が効果的です。天井のカビはフロアモップにカビ取り剤をつけて処理します。
カビを防ぐには使用後に浴室全体に冷水シャワーをかけて温度を下げること、換気扇を使用後もしばらく回し続けることが重要です。
皮脂・石鹸カス(浴槽・床)
皮脂汚れは酸性のため、重曹やアルカリ電解水をスプレーして少し置いてからスポンジで拭き取ります。浴槽の喫水線(湯あかライン)にはアルカリ性洗剤を吹きかけてスポンジで磨きます。床の黒ずみは複合汚れのため、中性の浴室用洗剤でブラシ洗いし、残った汚れにはクエン酸(水垢)または重曹(皮脂)を使い分けます。
排水溝の詰まり・ヘドロ
毎回チェックアウト後に排水溝のヘアキャッチャーを清掃します。蓄積した髪の毛やヘドロは使い捨てのビニール手袋で取り除き、重曹とクエン酸を組み合わせた発泡洗浄(重曹→クエン酸の順)を月1〜2回行うことで排水の流れを維持できます。
プロの浴室清掃手順(所要目安:15〜25分)
- 換気扇をオンにする
- カビが見える箇所にカビ取り剤を噴霧してパック(放置時間を活用して他の作業を進める)
- 鏡・蛇口にクエン酸水をスプレーしてパック
- 浴槽内・壁にバスルーム洗剤を噴霧してスポンジで洗浄(上から下の順)
- シャワーで全体を流す
- カビ取り剤・クエン酸を流す
- 鏡・蛇口・蛇口周りを乾いたクロスで拭き上げ
- 排水溝のヘアキャッチャーを清掃
- 浴室全体に冷水シャワーをかけて湿度を下げる
- 乾いたクロスで水滴をふき取って仕上げ
カビ取り剤とクエン酸パックの「放置時間中」に他の箇所を清掃することで、全体の作業時間を大幅に短縮できます。「待ちながら動く」のがプロの清掃の基本です。箱根の民泊清掃では温泉成分による頑固な水垢が多いため、パック時間を通常より長く設定しています。
【トイレ】汚れ別対処法とプロの清掃手順
トイレで発生する主な汚れと対処法
尿石・黄ばみ(便器内側・フチ裏)
尿が乾燥して固まったアルカリ性の汚れです。サンポールなどの酸性洗剤を便器内フチ裏に一周流し込み、5〜10分置いてからトイレブラシで磨きます。サンポールは塩素系洗剤(ドメスト等)と絶対に同時に使用してはいけません。塩素系洗剤を先に使った場合は十分に流してからサンポールを使用してください。
アンモニア臭・黄ばみ(便座・床・壁)
アンモニアはアルカリ性のため、クエン酸水スプレーが効果的です。便座の表裏、便座の蓋、便器の外側、タンク、床、壁の下部(飛散汚れ)を万能クリーナーを含ませたクロスで上から下へ順に拭き取ります。特に便座と便器の接合部の隙間、便器の底部・背面は見落としやすいポイントです。
黒ずみ(便器内・タンク内)
便器内の黒ずみは雑菌・カビ・水垢の複合汚れです。塩素系の便器洗浄剤(ドメスト等)をフチ裏から流し込み5〜10分置いてからブラシで磨きます。タンク内の黒ずみも年1〜2回確認・洗浄することで常時清潔を維持できます。
プロのトイレ清掃手順(所要目安:5〜10分)
- 便器のフチ裏に洗浄剤を一周流し込む
- 便座・便蓋・タンク・外側・壁・床を万能クリーナーで上から下へ拭き取る(放置時間中に並行して実施)
- トイレブラシで便器内を磨く
- フラッシュして洗浄剤を流す
- 便座の隙間・底部をスクレーパー等で拭き取る
- トイレットペーパーの残量確認・補充
- 消臭スプレーを空間全体に噴霧
「上から下」の順で拭くことが基本です。天井→壁→便器上部→便座→床の順に作業することで、拭いた箇所に再度汚れが落ちることを防げます。トイレ専用のクロスは必ず他の場所のクロスと分けて管理してください。
【キッチン】汚れ別対処法とプロの清掃手順
キッチンで発生する主な汚れと対処法
コンロ周りの油汚れ・焦げ付き
油汚れは酸性のため、アルカリ性洗剤(重曹・セスキ炭酸ソーダ・アルカリ電解水)が効果的です。コンロ・ガス台・周辺の壁にアルカリ電解水をスプレーして少し置いてからクロスで拭き取ります。焦げ付きには重曹ペースト(重曹+少量の水)を塗布して10〜15分置いてからスポンジで擦ります。五徳(ゴトク)は取り外してシンクで重曹水につけ置き洗いすると効率的です。
換気扇・レンジフードの油汚れ
民泊では複数のゲストが調理するため、換気扇フィルターに油汚れが蓄積しやすいです。フィルターを取り外してアルカリ性洗剤に10〜20分つけ置きしてからスポンジで洗います。換気扇カバーは毎回清掃し、フィルターは月1回以上洗浄することを推奨します。エアコンと同様、換気扇の内部油汚れが蓄積すると臭いの原因となるため、定期的な箱根のエアコンクリーニングとあわせてディープクリーニングが必要です。
シンクの水垢・茶渋・食品残渣
シンクのステンレス表面の水垢にはクエン酸水、茶渋や食品の着色にはメラミンスポンジが有効です。排水溝のゴミ受けは毎回チェックアウト後に清掃・消毒します。シンク内を最後にクロスで乾拭きして水滴を残さないと水垢の蓄積を防げます。
冷蔵庫内の食品残渣・臭い
ゲストが残した食品を確認・廃棄し、庫内を中性洗剤で拭き取ります。臭いが強い場合はアルコール除菌スプレーで拭き上げ、重曹や消臭剤を庫内に設置します。電子レンジ内の食品汚れは水を入れたコップを加熱して蒸気で汚れを浮かせてから拭き取ると効率的です。
食器・調理器具の確認
ゲストが使用した食器はすべて再洗浄します(ゲストが洗っていても確認のため再洗浄が基本)。食器の破損・欠品確認も清掃時に行い、次のゲストに向けて数量を揃えて棚に戻します。
プロのキッチン清掃手順(所要目安:15〜25分)
- 食器の確認・再洗浄
- コンロ・五徳・換気扇カバーにアルカリ洗剤を噴霧してつけ置き
- 冷蔵庫内の食品廃棄・内部拭き取り
- 電子レンジ内の清掃
- コンロ・五徳を洗浄・拭き取り
- シンク内をスポンジで磨き・排水溝清掃
- 冷蔵庫外面・電子レンジ外面・壁面の油汚れ拭き取り
- シンク・蛇口を乾拭きして水垢防止
- 換気扇カバーを拭き取り・元に戻す
- 消耗品(食器洗い洗剤・スポンジ・ラップ等)の補充確認
「油汚れには時間をかけて放置」が基本です。洗剤を噴霧したらすぐに拭くのではなく、1〜2分置いて油を浮かせてから拭き取ることで、力を入れずに汚れを落とせます。
温泉地(箱根・熱海・伊東)特有の水回り清掃の注意点
箱根・熱海・伊東エリアの温泉付き物件では、通常の民泊とは異なる清掃上の注意が必要です。
温泉水垢の特性:温泉成分(カルシウム・塩化物・鉄分・ミネラル)が水道水よりもはるかに多く含まれるため、浴槽・蛇口・鏡に固着する水垢が通常より硬く、頑固です。クエン酸パックの濃度を高め、放置時間を長めに設定することが効果的です。通常の清掃では落ちない場合は、月1回程度ディープクリーニングとして専用の水垢除去剤(鱗(ウロコ)取り専用剤)を使用することを推奨します。
温泉成分による変色:温泉成分を多く含む水では、浴槽・シャワーヘッド・蛇口・排水溝のステンレス部分が黒っぽく変色したり、白い結晶が付着したりすることがあります。これは化学反応によるものでカビではありません。変色部分には酸性洗剤(クエン酸)または金属磨き剤を使用して磨き、光沢を回復させます。
浴槽のコーティング保護:温泉成分は浴槽のアクリル・FRP素材を痛める場合があります。メラミンスポンジや研磨剤入りスポンジは浴槽内面への使用を避け、柔らかいスポンジと中性洗剤を使用してください。
水回り清掃チェックリスト
以下を清掃後の最終確認として活用してください。
浴室
浴槽内の水垢・汚れなし/鏡のウロコなし/床の黒ずみなし/排水溝清掃済み/カビなし/換気扇オン/水滴拭き取り済み
トイレ
便器内黄ばみ・黒ずみなし/便座表裏清潔/床・壁の汚れなし/アンモニア臭なし/トイレットペーパー補充済み
キッチン
コンロ油汚れなし/換気扇カバー清掃済み/シンク磨き済み・水滴なし/排水溝清掃済み/冷蔵庫内空・清潔/食器洗浄・数量確認済み/消耗品補充済み
水回り清掃を外注したほうがよいケース
以下の状態になった場合は、チェックアウトごとの通常清掃では対処が難しくなります。定期的なディープクリーニングを専門業者に依頼することを検討してください。
浴室では、カビ取り剤を使っても翌週には再発するほどの黒カビ・ピンクカビが繰り返し発生する場合、鏡のウロコ汚れがクエン酸パックで落ちなくなった場合、浴槽の喫水線が長期間固着して変色している場合です。キッチンでは、コンロ周り・換気扇内部に長期蓄積した油汚れが固着して通常清掃で除去できない場合、排水管からの臭いが消えない場合です。トイレでは、尿石が便器に固着して酸性洗剤でも落ちなくなった場合がサインです。
インビックスでは、通常の清掃サービスに加え、温泉地特有の水垢・ミネラル成分への対応を含む熱海の民泊清掃・小田原の民泊清掃をはじめ各エリアに特化した民泊清掃を提供しています。水回りの定期ディープクリーニングのご相談もお気軽にお問い合わせください。
まとめ
民泊の水回り清掃の基本は「汚れの性質を理解して適切な洗剤を使うこと」と「洗剤の放置時間を活用して他の作業を並行すること」の2点です。浴室は水垢(酸性洗剤)とカビ(塩素系)の使い分け、トイレは上から下の順と洗剤の混合禁止の徹底、キッチンは油汚れへのアルカリ洗剤の放置が基本原則です。箱根・熱海・伊東の温泉地物件ではさらに温泉由来のミネラル成分による水垢への対策が加わります。通常清掃で対処できない固着汚れは定期的なディープクリーニングでリセットすることで、Airbnbの「清潔さ」スコアを高く維持し続けられます。
よくある質問
民泊の浴室で水垢が落ちないときはどうすればいいですか?
水垢はアルカリ性の汚れなので、クエン酸水をスプレーしてキッチンペーパーで覆い10〜15分パックしてから拭き取ります。箱根・熱海・伊東など温泉地の物件では温泉成分により通常より頑固な水垢が付くため、クエン酸の濃度を上げるかパック時間を30分に延ばすと効果的です。
民泊のトイレ清掃で気をつけるべきポイントは何ですか?
「上から下」の順で拭くことが基本で、便座・壁・床の順に作業することで再汚染を防げます。尿石には酸性洗剤(サンポール等)を使いますが、塩素系洗剤と絶対に混合しないよう注意してください。便座と便器の接合部の隙間や便器底部・背面は見落としやすい重要チェックポイントです。
民泊のキッチンの油汚れを効率よく落とす方法は?
油汚れは酸性のため、重曹・セスキ炭酸ソーダ・アルカリ電解水などアルカリ性洗剤が効果的です。洗剤を噴霧したらすぐに拭かず、1〜2分置いて油を浮かせてから拭き取ることで、力を入れずに汚れを落とせます。五徳は取り外してシンクで重曹水につけ置き洗いすると効率的です。
温泉地の民泊で水回り清掃に特別な対応は必要ですか?
温泉成分(カルシウム・塩化物・鉄分)が水道水より多く含まれるため、浴槽や蛇口に固着する水垢が通常より硬く頑固です。月1回程度のディープクリーニングで専用の水垢除去剤を使用し、浴槽のアクリル・FRP素材を傷めないよう柔らかいスポンジと中性洗剤を使用することが重要です。
参考文献
この記事は、箱根・熱海・小田原エリアで年間5,000件以上の民泊清掃を実施する経験に基づいて作成されています。個別物件により最適解は異なる場合があります。必要に応じて専門家へご相談ください。
この記事の監修者
黒須 大株式会社インビックス 代表取締役
高級旅館および複数の宿泊施設での現場経験を基盤に、宿泊運営の構造を実務レベルで理解。
その後、ハウスクリーニング事業を立ち上げ、サービス設計・品質管理・オペレーション構築を主導してきました。
現在は宿泊施設専門の民泊関連サービスに注力し、単なる清掃支援にとどまらず、事業設計・運営改善・体制構築までを包括的にサポート。現場と経営の両視点から、持続可能な宿泊事業の成長を支援しています。

