箱根、熱海、鎌倉。日本を代表するこれらの観光地では、宿泊ゲストの半数以上が海外からの旅行者という民泊物件も珍しくありません。インバウンド需要の回復は民泊オーナー様にとって大きなチャンスですが、清掃の現場では外国人ゲスト利用後ならではの課題に日々直面しています。
誤解のないように先にお伝えしますが、これは「外国人ゲストのマナーが悪い」という話ではありません。文化や生活習慣が異なるゲストが日本の住宅環境を利用すれば、日本人ゲストとは違うタイプの清掃課題が発生する、というだけの話です。その違いを理解し、あらかじめ対策を講じておくことで、清掃の負荷を抑えながらすべてのゲストに快適な環境を提供できます。
この記事では、インバウンドゲスト後の清掃で現場が実際に直面する課題と、プロが実践する具体的な対応策を解説します。
インバウンドゲスト後の清掃で実際に起きる5つの課題
ゴミの分別がされていない
日本のゴミ分別ルールは世界的に見ても非常に細かく、外国人ゲストが滞在中に正しく分別することは現実的に難しいです。鎌倉・藤沢エリアのように10種類以上の分別が求められる自治体もあります。結果として、清掃スタッフが到着すると、燃えるゴミ・ペットボトル・缶・ビンがすべて一つの袋に混在しているケースが頻発します。清掃スタッフがゴミの再分別を行う必要があり、これだけで10〜20分の追加時間がかかることも。
土足での入室による床の汚れ
欧米やアジアの一部の国では、室内でも靴を履いたまま過ごす文化があります。ハウスルールで「玄関で靴を脱いでください」と案内していても、習慣的に土足のまま室内を歩いてしまうゲストは一定数います。土足の影響は床だけでなく、カーペットやラグ、畳にまで及びます。特に箱根の民泊清掃でも対応する和室がある物件では、畳に靴の汚れが付着すると通常の清掃では落としきれず、専用の畳クリーニングが必要になることもあります。
調理後のキッチン汚れが重い
自炊可能な民泊物件では、ゲストの食文化の違いがキッチンの汚れに直結します。スパイスを多用する料理、高温の油調理、強い香辛料の使用。これらは換気扇のフィルター、コンロ周り、壁面の油はねとなって残ります。特に長期滞在のゲストの場合、数日分の調理汚れが蓄積し、通常の拭き掃除では対応しきれないレベルの油膜がキッチン全体に付着していることがあります。
大人数での利用による消耗の加速
インバウンドゲストは家族やグループでの旅行が多く、定員いっぱいまたはそれ以上の人数で利用するケースが見られます。大人数での利用は、タオルやリネンの使用量の増加、水回りの汚れの増大、共有スペースの消耗加速につながります。浴室では、シャンプーやボディソープの使用量が想定以上に多くなり、排水口に髪の毛が大量に詰まる頻度も高まります。
設備の使い方の違いによるトラブル
温水洗浄便座の操作ミス(水浸し)、IHコンロの使い方がわからず空焚き、エアコンのリモコン操作がわからず窓を開けっ放し。設備の使い方が日本独自のものであるほど、ゲストが戸惑い、予期しないトラブルにつながります。清掃スタッフが到着した時点で「トイレの床が水浸し」「コンロに焦げ付き」「エアコンが一晩中フル稼働で結露が壁に」といった状態を発見することがあり、通常清掃+αの対応が必要になります。
熱海の民泊清掃を担当するスタッフの話です。夏のハイシーズン、8名グループのインバウンドゲストがチェックアウトした後の物件に入ると、まずキッチンのスパイス系の香りが室内に充満。コンロ周りは油がはね、ゴミ袋3つ分のゴミが未分別で放置。浴室の排水口は髪の毛で完全に詰まり、リビングのラグには靴跡が。通常45分の物件ですが、この日は1時間30分かかりました。こうした状況を「想定内」として対応できる体制を事前に組んでいたからこそ、次のゲストのチェックインには間に合わせることができました。
プロが実践するインバウンド対応清掃の5つの対策
清掃負荷を減らすための「予防」の工夫
清掃の対応力を上げることも大切ですが、そもそも清掃負荷を減らすための予防策をオーナー様側で講じておくことも重要です。
ビジュアルで伝えるハウスルール
文字だけのハウスルールは読まれません。特に言語が異なるゲストには、イラストやピクトグラムを使った視覚的な案内が効果的です。「靴を脱ぐ場所」「ゴミの分別方法」「コンロの使い方」など、清掃課題に直結するポイントはビジュアルで伝えましょう。
備品の配置で「正しい使い方」を誘導する
玄関にスリッパを人数分用意して目立つ位置に置く。ゴミ箱を分別ごとに色分けして設置する。コンロの横に使い方カード(多言語)を貼る。こうした小さな工夫が、ゲストの行動を自然に誘導し、清掃負荷の軽減につながります。
エアコンの使い方をわかりやすく案内する
エアコンのリモコン操作がわからないゲストが窓を開けっ放しにすると、箱根のエアコンクリーニングでも課題となるエアコンの効率低下だけでなく、虫の侵入や結露の原因にもなります。リモコンに日英の操作シールを貼る、簡易マニュアルをテーブルに置くなど、ゲストが迷わず操作できる環境を整えましょう。
箱根で4物件を運営するオーナー様のケースです。インバウンド比率が70%を超える物件で、清掃時間が通常の1.5倍以上かかる状態が続いていました。私たちの提案で、ゴミ箱の色分け分別、玄関のスリッパ誘導、キッチン・トイレ・エアコンの多言語操作カードを導入。さらにリネンレンタルのセット数を繁忙期1.5倍に増強。導入後3ヶ月で、清掃スタッフの平均作業時間が20%短縮。ゴミの再分別にかかる時間もほぼ半減しました。「お金をかけたのは案内カードの作成費だけ。それだけでこんなに変わるとは」とオーナー様は驚いていました。
インバウンド比率が高い物件の清掃時間の見積もり方
清掃業者に依頼する際、インバウンド比率の高い物件であることを事前に伝えていないと、見積もりと実際の作業時間にズレが生じます。
- 通常(国内ゲスト中心)
- 5分
- インバウンド比率が高い物件
- 15〜20分(再分別込み)
- 通常(国内ゲスト中心)
- 10分
- インバウンド比率が高い物件
- 15〜20分(水拭き追加)
- 通常(国内ゲスト中心)
- 10分
- インバウンド比率が高い物件
- 15〜25分(油汚れ対応)
- 通常(国内ゲスト中心)
- 15分
- インバウンド比率が高い物件
- 15〜20分(排水口詰まり対応)
- 通常(国内ゲスト中心)
- 5分
- インバウンド比率が高い物件
- 10分(消耗品の追加補充)
- 通常(国内ゲスト中心)
- 約45分
- インバウンド比率が高い物件
- 約70〜95分
この差を理解した上で清掃時間を見積もり、チェックイン時刻に余裕を持たせたスケジュールを組むことが、インバウンド対応物件の安定運営には欠かせません。
まとめ
インバウンドゲストの増加による清掃課題は「トラブル」ではなく「想定内の業務」として対策を組み込むことが重要です。
ゴミの再分別を清掃工程に組み込み10〜15分のバッファを確保して未分別を前提にした時間設計にすることが重要です。床清掃は土足利用の可能性を前提にウェットモップの水拭きを標準化し、キッチンは3〜5回ごとに換気扇・壁面の油膜除去を行いましょう。リネンと消耗品は大人数利用を前提に繁忙期1.5倍で手配し、イラスト・ピクトグラム・多言語カードでゲストの行動を誘導して清掃負荷を予防します。清掃時間の見積もりはインバウンド対応で通常の1.5〜2倍を見込んでスケジュールを組んでください。
「インバウンドゲストが増えて清掃が追いつかない」「通常の清掃時間では足りなくなってきた」というオーナー様は、ぜひご相談ください。インバウンド対応に慣れた清掃チームが、物件に合った対策プランをご提案いたします。
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民泊清掃・リネンレンタル・エアコンクリーニングなど、宿泊施設運営に関するお悩みは何でもご相談ください。お見積もりは無料です。
よくある質問
インバウンドゲスト後の清掃で特に大変なことは何ですか?
ゴミの未分別が最も頻繁に発生し、再分別だけで10〜20分の追加時間がかかります。また、土足での入室による床汚れ、スパイス系料理の油はねや残り香、大人数利用による備品の消耗加速、設備の使い方の違いによるトラブルも現場で多く見られる課題です。
外国人ゲストのゴミの分別問題にはどう対処すればいいですか?
「ゲストが分別してくれる」ことを前提にせず、清掃スタッフによる再分別を最初の工程に組み込み、10〜15分のバッファを確保することが重要です。同時に、ゴミ箱を分別ごとに色分けしてイラスト付きで設置するなど、ビジュアルで伝える予防策が効果的です。
インバウンド対応の民泊では清掃時間をどれくらい見込めばいいですか?
インバウンド比率が高い物件では、通常の1.5〜2倍の清掃時間を見込む必要があります。1Kの場合、通常約45分のところ約70〜95分が目安です。ゴミ再分別・床の水拭き追加・キッチンの油汚れ対応などが主な追加工程となります。
インバウンドゲストの清掃負荷を減らす予防策はありますか?
イラストやピクトグラムを使ったビジュアルのハウスルール、玄関にスリッパを目立つ位置に配置する誘導、コンロやトイレの多言語操作カードの設置が効果的です。あるオーナー様はこれらの予防策を導入後3ヶ月で、清掃スタッフの平均作業時間が20%短縮されました。
この記事は、箱根・熱海・小田原・伊東エリアで年間6,000件以上の民泊清掃を実施する経験に基づいて作成されています。個別物件により最適解は異なる場合があります。必要に応じて専門家へご相談ください。
この記事の監修者
黒須 大株式会社インビックス 代表取締役
高級旅館および複数の宿泊施設での現場経験を基盤に、宿泊運営の構造を実務レベルで理解。
その後、ハウスクリーニング事業を立ち上げ、サービス設計・品質管理・オペレーション構築を主導してきました。
現在は宿泊施設専門の民泊関連サービスに注力し、単なる清掃支援にとどまらず、事業設計・運営改善・体制構築までを包括的にサポート。現場と経営の両視点から、持続可能な宿泊事業の成長を支援しています。

